フィレンツェにもサン・マルコ修道院があります。
こじんまりとした比較的質素な修道院なのですが、
入って階段を上がった所にフラ・アンジェリコの
受胎告知があります。
その静謐な絵にしばし見惚れてしまいました。
フラ・アンジェリコとは修道士アンジェリコという意味で
とても信心深く愛想の良い人だったようです。
彼がサン・マルコ修道院の修道士部屋の壁に描いた
飾り気のない静謐なフレスコ画は、それを見て祈る
修道士たちに心の平穏をもたらしたことでしょう。
受胎告知
天使からのお告げをきくマリア様
神の子を宿す宿命を驕ることなく
ありのままに受け入れている
マリア様は神様に近い存在ではなく
一人の母であり一人の人間であった
聖母として生きることは
辛くはなかったのだろうか
あまりにも素朴なマリア様は
神の子を宿す畏れを隠さず
それでも慈愛に充ち溢れている
この絵の前で祈りを捧げ続けた
修道士たちの厳しい修行の中に
救いはあったのだろうか
彼らにとって祈ることは
真摯に生きることだった
神を信じぬ私がフラ・アンジェリコの
「受胎告知」から貰った静謐な時間
この絵を美術館などではなくて
サンマルコ修道院で見られた僥倖に
祈りを捧げずにはいられなかった