アイヌの伝説によると、愛する人や恋しく思う人のそばに
心の思いをこめた黒百合の花を名前も告げずにそっと置き、
相手がその花に気づいて手に取ってくれれば、思いが叶う
という話です。
どことなく魔性の女を想像させる花。
でも、魔性の女の中にも純情可憐な心はきっとあるはず。
そう信じてこの詩を書きました。
Photograph by Mr. Sakuo
黒百合‐再生‐
世間の荒波にもまれ
疑心暗鬼になってた
私の心を開いたのは
あなただけだった
初めて私が愛した人
それなのに突然
死んでしまうなんて
私の指のあいだから
乾いた砂がさらさらと
こぼれていくように
愛は消えてしまった
真っ黒な喪服を着て
絶望の涙を流したまま
私の時間は止まった

いつしか時は流れて
あなたが耳元でささやく
そんなに悲しまないで
僕はいつもそばにいる
君と過ごした季節は
消えることはないから
さあ、微笑んでごらん
あなたの優しさと
揺るぎない愛情が
遺してくれたものは
夜の闇に閉ざされた
私の黒い花びらにさえ
進む道を示している
柔らかい満月の光
その光に包まれて
私は私らしく咲く
あなたから貰った愛を
決して絶やさぬように
いつも微笑んでいよう
そして人々の足元を
照らす灯火となろう